『デパートメント・ストア』＆『凱旋門』千秋楽報告

いろんな複雑な思いを飲み込んで、たあたん最後の雪組公演が千秋楽を迎えました。台風が来るか？とか心配もしましたが、少し秋めいてきたもののとても良いお天気に恵まれ、公演は滞りなく進みました。

たあたんは朝１０時５５分頃楽屋入り。オフホワイトのパンツスーツにサングラスと、夏らしく爽やかな装い。スタンバイからわずか１０分で来られたので、居並ぶファンは「は、早い…」。楽のことゆえ大量のそのファンからの手紙を１人ずつ受け取っておられましたが、普段ならかする（時間に間に合わず、たあたんに会えないことです）タイミングで現れた人も、大量だったので助かったそうです。とにかく多かったもんなあ…。

これが他の組だったらアドリブ満載なんでしょうけど、そこは雪組、悪のりというほどには脱線せず、というかかなりの「お別れムード」が漂いすぎ、ちょっとウエットな感じだったかな、という気がしました。フィナーレなど、舞台上で抱き合う同期トリオなんか見ちゃうと、こちらも涙が止まらないだろうって(^^;)。でも、何だかあっという間に終わってしまったって印象です。

殆どの場面はいつも通りでしたが、ゾンビでは途中から登場した手作りせんべいが何とレコードくらいの大きさになっており、とどさんからそれを取り上げたとうこちゃん、かじらずに座布団替わりにして座ってしまってました。私は「フリスビーにして投げたりして」などと思ったんですがね（んなわけないか^^;;）。

中詰でとどさんが投げるコインは、いつもよりも大量で床に転がってたし、フィナーレの社長さんたちは、エレベーターが開くとなんと「シェーッ」してました。それにあわせてとどさんも「シェーッ」。これ、若い人にゃあわからんギャグかもな、って気がしたんですが…どうだったんでしょうか。

リッチーは最後まで可愛く健気な御曹司でありました。躍動感もあり、とにかく元気。首の動き、ジャンプの高さ、歌声の大きさともう絶好調。

失業者にいたぶられる場面では、予想通り？帽子をもぎ取られて頭はクシャクシャ…フレックスたちを見つけて銀橋に出る前に、頭をなでつけて帽子を被る姿がまたしても大受けで（かわゆいというか、アホらしいというか）、銀橋では「とても好きなんだよ」の歌詞にあわせて、２人に両側から抱きしめられてました。で、最後はフレックスに「行こう！」と言われ、男同士手をつないで引っ込んでいき、後ろからジャネットが「待って！」と追いかけてました。実はここは「きっとそうなるよ」と予想していたので、本当にそうなって笑った笑った…。中詰の最後も、フレックスと抱き合ってました。

私は「掃除のおばさんのうた」はもう全然持ちこたえることが出来ずボロボロ。膝の上に置いたタオルのお世話になりっぱなし。たあたんはすんばらしかったけど目はやはり何となく潤んでて、しーちゃん、とうこちゃんなんかはこちらが見てるのがつらかったです。この場面とフィナーレが一番きつかったかなぁ。あ、そうそう、リゾートの場面では、出てきたときとうこちゃんと抱き合ってました（ここまでで何回抱き合っただろう～…）。

「明日もやってる」の代わりに「次は東京」で幕を下ろした『デパートメント・ストア』。そこを人一倍大きな声と笑顔で歌っていたたあたん。「この世界複雑すぎて　何もかもうまくいきはしないけれど」という歌詞が胸にしみる、ちょっとほろ苦い幕切れでありました。

お芝居は、うーん、実は全然覚えていません(^^;;;;;)。寝てたわけではないんですよ！　いつも通り淡々とした展開でした。もともとアドリブの似合う作品ではないし、そんなに変える要素もないですし。みりちゃんが「フルフル」の場面で、相手役？のたくちゃんから赤いバラを一輪プレゼントされていたのと、シビさんがちょっとアドリブ飛ばしていたくらい。前楽がピーンと張りつめた雰囲気で、お芝居の密度が濃かったのと比べると、内容的にはやはり劣ったのは確かです。客席も役者も、ひたすらに最後の一点に向かって行ってるって感じがして。

最後のその一点が、ラヴィックとジョアンの別れではなかったのが、今日の異様さでしょう。ジョアンが死んだ後の場面、ボリスが上手花道に登場したあたりからの客席の雰囲気がどうにも異様で…なんて言ったらいいのかな、客席全体がすすり泣いているって感じがしたんです。私はもちろん、この手の展開には弱いタイプなので、涙はじぇんじぇん止まらなかったんですが、ハイメの「ありがとうございます」辺りからすすり泣く声があちこちから聞こえ、下手のドア前で、収容所に送られていく人々を見つめるボリスの頬は涙で光り…極めつけは、どことなくたどたどしい台詞回しの２人のやりとり。

そそくさと台詞を言い合うのがやっと、って感じのあとの抱擁の長さ・力強さに、客席の空気は…。どういうのか「これはもう芝居じゃない、何で私たちはこういうものを見る羽目になったのだろう」と思ってしまいました。

私は物好きにも何回も楽を見ていますが、こういうちょっと異様な空気っていうのを感じたのは初めてです。うまく言葉には出来ないのですが、その場に居合わせた人間は、雪組が変わっていくのを認識させられてしまった、とでも申しましょうか。それぞれに旅券を手にして戦うボリスとハイメがそのまま、違う組でもまた共演することを約束されているたあたんととうこちゃんにダブったりしたのでした…そして、置いて行かれる人たちも。今回の楽は見るのがつらいかもな、と思っていたのですが、私自身、ちょっと宝塚とは無関係なことで私的なショックがあったりしたので、もうハチャメチャでした。

たあたんは最後までよく頑張ったな、と思います。どこかで崩れちゃったりしないかな？と実は思っていたのですが、さすがに役に入り込むとあんまり動揺しないようで。ただ、フィナーレのダンスは今日は感慨深かったのか、いつもの張りつめた顔ではなく、どことなく淋しげな微笑みが浮かんでました…その分、ダンスにいつもほどのキレがなかったようには思いますが、今日ばかりは仕方がない。見ていて「ああ、たあたんはこのダンスが本当に好きだったんだな」と思えて、気がついたら双眼鏡覗く両目から涙がボロボロ…でも、その後の紅白のおめでたい場面(!)は、いつも通り目立ってました。

パレードの時のたあたんへの大きな拍手は、さっきの異様な雰囲気の裏返しなのかな、とか思えたり、何となく下級生は硬い表情が多いな、と思ってみたり。たあたんの隣で涙ぐんでいるとうこちゃん見てるのもつらかったけど、たあたん自身は目を潤ませながらも、最後まで笑顔を絶やすことはなかったです。

緞帳が降りたあと、組長のナガさんが前に出てきて、今後の日程・退団者紹介と挨拶がありました。これも予想通り？組替えになった人は紹介のみ。でも、「新しい組での出演予定」なんかも紹介されていました。

そして、退団する２人の挨拶。珠希かほちゃんはヒマワリ、みりちゃんは蘭をあしらった髪飾りをつけていました。みりちゃんの挨拶はほーんとにあっけなく、この人は案外あっけらかんとしてるのかな、とか思えました。

とどさんの挨拶は、これまたいつも通り…のつもりだったんだと思いますが、あっけなく終わりました。多分、何も言えないっていうか、考えられなかったんだろうなって感じで、彼女の動揺ぶりを感じてしまいました。たあたんの表情が凄く複雑そうで、こういう時って笑顔は苦痛かも知れないと思ったりしました。ちなみに、とうこちゃんはボロボロ泣いてました…。

退団者に贈る「組からのお花」をたあたんが持っていなかったのを見たとき、これがもう雪組でも２番手でもないってことなんだな、と、強烈に淋しくなりました。仕方がないけど…どこかの組で「組からのお花」を渡せる日は来るんだろうか、と思ったり…寺田先生を偲んでってわけで最後の歌は、なーんと「雨の凱旋門」だったんですが…この選曲は、うーん、違う曲にしてほしかった。なーんで「いのち」じゃないんだろう、とか思いました。歌いながら泣いてる生徒さん続出。たあたんも今にもこぼれんばかりに涙ぐんでいました。

そのあとカーテンコールが３回。２回目だったかな、とどさんが「組替え者と退団者、一歩前へ」と言うと、たあたんも隣のとうこちゃんと共に一歩前へ。いつもの挨拶では「くっだらねー」と思うようなことしか言わないとどさんですが、今回ばかりは一応気遣ってくれたのかな、と思ったりしました。３回目のカーテンコール、ああこれが、ひょっとしなくてもたあたんの雪組の見納めなんだな、とか思ったら、なーんか感慨深くって…充実している、と言われていた雪組。なんでこうなっちゃったんだろう、と思ったりしました。どの生徒さんも表情はあまり冴えてなかった、そりゃそうでしょう。

たった２年と８ヶ月。もう１回雪組を去ることになるなんて思いませんでした。一番そう思っているのはたあたん自身かも知れません。決まったことは仕方がないのだけど、せめてこれからは、いいことがもっとあって欲しいな、と思います。

お似合いだった白い衣装のたあたん。淋しげな笑顔で手を振る姿が緞帳に飲み込まれ、たあたんにとって最後の雪組公演は、その幕を閉じたのでした。

今日もお帰りは楽屋口から。５時４０分くらいから、まず２人の退団者が紋付き袴姿で登場。みりちゃんには私の周囲も大きな拍手を送っていました。たあたんが出てこられたのは６時過ぎ。入りと同じスーツでばっちり決めて「あー、すっきりしたぞ」って美しさ。何故か？三色旗の小旗を振る私たちファンに、笑顔で手を振っておられました…それも、走り去っていくクルマの窓から腕を出して(^^;)。

いろんな思いが交錯した公演。途中でいろんなことがありすぎて、何だか訳がわからなくなってしまったんですが、気がつけば次の公演の前売りは目前。

言いようのない淋しさはあるものの、やがて来る新しい出会いに向かって、私も頑張らねばなあ、と思ったりしております。

なーんか支離滅裂な報告ですいませんm(_ _)m。ご覧になった方で「おーい抜けとるぞぉ」ってのがありましたら、ご一報下さいマシ。